浮世絵の用語 その2 技法編

ここでは浮世絵の「摺り」に関する用語の簡単な解説をします。

空摺(からずり)

版木に絵具をつけずに摺り、凹線で無色の図様を表現する技法。
衣服のさや形紋などに多く用いる。

布目摺(ぬのめずり)

空摺の一種。版木に布を貼りつけ、絵具をつけずに強いバレンですると
布の織り目が浮き出し、布地の質感が表現できる。
洋紙と違って弾力性のある和紙だからこそできる芸当。

きめ出し(きめだし)

「きめこみ」とも言い、色摺の済んだ絵を裏表にして版の上に載せ肘などで強く押して輪郭内を凹ませる。
表に返すと対象部分が隆起して浮き出したようになる。
無色の線で立体感が出せるため、雪や波などの白いものが効果的に表現できる。

地潰し(じつぶし)

画面の余白部分すべてを一色で摺ること。
用いられている色によって「黄潰し」「鼠潰し」などというように呼び方も変わる。

雲母摺(きらずり)

地潰しをした上から、同じ要領で雲母(うんも)のみを用いてもう一度地潰しを行う技法。
摺りあがると雲母が乱反射して豪華な感じになる。

ごま摺(ごまずり)

「ごまずき」とも言う。弱いバレンで地を潰さないように圧力を加減して摺る。
綾(あや)・紗(しゃ)・絽(ろ)などの透き通る生地の着物の質感を出すのに最適な技法。

正面摺(しょうめんずり)

「つや摺」とも言う。摺りあがった絵が乾いてから、光沢を出したい部分を彫った
版木(通常の版木とは逆に彫ってあり、正面板という。)に絵を表にして置き、
絵の表側を陶磁器や猪の牙などでこすってツヤを出す技法。
黒地の着物に光沢のある文様を表現するのに使われる。

無線摺(むせんずり)

輪郭線(墨線)を用いずに色版のみで形を表現する技法。
顔の輪郭線、あるいは着物の一部分だけを無線摺で仕上げたものもある。

ぼかし摺(ぼかしずり)


ぼかしとは、いうなればグラデーションの事を指し、浮世絵には必須の技法です。

1.吹きぼかし

版木の一部を濡れ雑巾で拭き、水気のあるうちに刷毛の一部に絵具を含ませて
版木につけて摺る技法。空の表現によく用いられる。

a.一文字ぼかし
   
絵の上部に細く一文字状に空の色をぼかして摺るもの。空気遠近法の効果を出す。

b.あてなしぼかし

特に目当てを設けず、特定の彫版の形もないところからの名称。
版木の一部に少量の水を垂らし、そこへ絵具を含ませ色の広がったところを摺る。
空の群雲などの表現に用いる。

2.板ぼかし

色版のぼかす部分を絵の輪郭より広めにとって彫り、周囲の部分をトクサや椋の葉などで磨き、
傾斜をつけた状態で摺る。絵具の付きかたにムラができ、吹きぼかしの滑らかな感じとは違った
質感を出せる。風景画の土坡(どは)の陰影や雲などの表現に用いる。